車のエーミングとは?作業内容や必要性、依頼先の選び方まで

車に関する技術の進歩はすさまじく、事故の危険を減らしてくれる予防安全技術や、運転を楽にしてくれる運転支援機能などの機能が搭載されていることがほとんどです。

ただし、そういった機能が正しく作動できる状態を維持するためには「エーミング」と言われる作業が必要になります。

この記事では、エーミングとは何か、必要性や作業内容、依頼できる場所などエーミングについて詳しく解説します。

目次

エーミングとは

エーミングとは、ASV(Advanced Safety Vehicle)車両において、電子制御装置が正しく作動するように校正する作業のことを指します。

たとえば、事故の危険を回避・軽減する衝突被害軽減ブレーキと言った予防安全技術や、安全運転を支援してくれる車線維持システムなどが挙げられます。

主に、電子制御装置の検知システムであるカメラやレーダーが装着されたバンパーやグリル、フロントガラスといったパーツの修理や交換時にエーミングを実施する必要があります。

※ASV車両とは…衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全技術を搭載した車のこと。

エーミングを行う必要性

エーミングを行う必要性は、電子制御装置の検知システム(カメラやレーダーなどのセンサー類)を適切なタイミングで正しく作動させるためです。

校正ができていない場合、電子制御装置の操作が安定しなかったり、作動しなかったりという不具合が起こる可能性があります。

エーミングはどんな場合に行う必要がある?

エーミングは、主に以下のケースで必要になります。

事故や修理後の再調整

事故によって車に衝撃を受けた際、また板金塗装や修理を行った後は、センサーやカメラの取り付け角度がズレる可能性があります。

先進安全装備は、ミリ単位での精度が求められるため、バンパー交換やボディの歪み修正後にエーミングを行わないと、運転支援機能が正常に作動しなくなるおそれがあります。

OBD車検

OBD車検とは、車の電子制御ユニット(ECU)に記録された故障コードや動作データを専用のスキャンツールで読み取り、法定基準に適合しているかを確認する検査です。

近年、このOBD検査が車検に本格導入されたため、車検時にエラーコードが検知されると車検に通りません。

カメラやレーダーに関連するエラーコードが記録されている場合、運転支援システムの精度が低下している可能性があるため、センサーの確認や再調整(エーミング)が必要になります。

センサー類はわずかな衝撃でも調整が必要になることがあり、事故歴がなくてもエラーコードが出ることがあります。

そのため、車検に通すためにエーミング作業が必要になるケースが増えています。

エーミングをしないと起こりうるケース

エーミングをしないと機能を適切なタイミングで正しく作動できずに本来であれば防げるはずの事故を回避できなかったり、安全運転を支援するシステムが逆に危険な状況を生み出してしまったりすることになりかねません。

ここでは支援システムごとに、エーミングをしないと起こりうるケースについて見ていきます。

衝突被害軽減ブレーキの場合

たとえば、衝突被害軽減ブレーキの場合、車によって機能のレベルは異なりますが前方の車両や歩行者、自転車などを検知し、衝突の危険があればシステムが自動でブレーキを作動させることで衝突の回避や衝突被害の軽減を図ります。

検知にはカメラやレーダーのいずれか、または併用して前方を監視し、対象となる車両や歩行者などを認識しています。

センサーが装着されたバンパーなどを脱着しエーミングが行われないまま走行すると、対象となる車や歩行者が認識できない、または対象を検知しても正しい距離が計測できず、ブレーキが作動しない、または間に合わないなどの可能性が出てきます。

ふらつき注意喚起装置の場合

ふらつき注意喚起装置は、ドライバーの疲労やわき見運転などによって蛇行するなど、ハンドル操作が安定しないときに警告を発するシステムです。

車両の挙動を検知するセンサーやカメラが装着されており、エーミングが正確に行われていないと、走行中のふらつきを正しく検知できなくなる可能性があります。

システムによっては車線情報やステアリングの操作量、速度など、複数のデータを複合的に判断しているため、わずかなセンサー位置のズレがエラーにつながることがあります。

車線逸脱警報や車線維持支援システムの場合

車線からのはみだしを警告する車線逸脱警報や、車線内走行を維持するようにステアリング操作をサポートする車線維持支援システムの場合、車線が検知できない、ステアリングアシストが正しく行われないなどの不具合が考えられます。

車両横滑り制御装置(VSC・ESC)の場合

車両横滑り制御装置(VSCやESCと呼ばれる装置)は、雪道や雨天時など路面が滑りやすい環境で、車両が横滑りを起こしそうになると自動的にエンジン出力を制限し、必要に応じて特定の車輪に制動力を加える機能です。

これらのシステムは、車両のヨーレートセンサーやステアリング角センサーなど、複数のセンサー情報を参照して制御しています。

もし何らかの理由で車体のセンサー配置が変化していたり、ステアリング角に誤差が生じると、横滑り検知のタイミングが遅れたり、逆に不要なタイミングで制御が働いてしまうケースがあります。

車間距離制御装置(ACC)の場合

高速道路などの自動車専用道路では、システムが加減速を支援し、車間距離を維持しながら先行車に追従走行する運転支援機能(アダプティブクルーズコントロールなど、メーカーによって名称は異なる)が搭載されている車両もあります。

しかし、エーミングが正しく行われていないと、先行車の位置や速度を正しく検知できなくなる可能性があります。その結果、適切な車検距離を保てず、追突のリスクが高まることもあります。

駐車支援システムの場合

最近では、車庫入れや縦列駐車などをアシストしてくれる駐車支援システム(パーキングアシスト)を備えた車が増えています。

車両周囲を俯瞰映像で表示するアラウンドビューモニターや、リアカメラガイド線を自動修正する機能などは、カメラや超音波センサーのデータを元に作動する仕組みです。

これらのセンサーの高さや角度、取り付け位置が正しくない場合、実際の車両位置とシステムが認識する位置との間に誤差が生じます。

その結果ドライバーが表示されるガイド線に従って駐車しているのに車体をこすってしまう、などのトラブルにつながるリスクがあります。

エーミングはすべての車両で必要?

エーミング作業は、すべての車において必要なわけではありません。

ここでは、エーミングを必要とする車両、必要としない車両について詳しく見ていきましょう。

エーミングを必要とする車両

先進安全技術パッケージを搭載している車(ASV車両)で、カメラやセンサーが装着されているパーツの脱着を伴う修理、またはフレーム修理を行った場合はエーミングが必要です。

たとえば、スバルの「アイサイト」、トヨタ「Toyota Safety Sense」、ホンダ「Honda SENSING」などです。

ただし、中には軽微な衝突のみでもカメラやレーダーなどの軸ずれが起こる可能性がありエーミングが必要としている車種も存在します。

ASV車両を使用していて事故に遭った場合には、パーツ交換が必要ない場合でもディーラーや整備工場などに問い合わせてエーミングの必要性を確認する必要があります。

エーミングを必要としない車両

エーミングは、ASV車両に対して行われる整備です。衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術を搭載していない車は、エーミングは必要ありません。

なお、国土交通省が電子制御装置整備制御の対象車種(エーミングが必要な車)を公開しています。

自分の車がエーミング作業対象車種かどうか迷ったときは、確認してみましょう。

エーミングが必要となる修理やパーツ交換例

事故や故障などでASV車両のフロントガラスやバンパーが壊れた場合、車の修理(板金修理など)もしくはパーツを交換することになります。

板金修理もしくはパーツ交換を行う場所によっては、エーミングが必要になります。

例えば、衝突被害軽減ブレーキに用いられるセンサーやカメラが設置されているフロントガラスを交換する場合は、修理後にエーミングが必要です。

フロントガラス交換時にエーミングを行わなかった場合、カメラやセンサーにズレが生じ、衝突被害軽減ブレーキが適切に作動しなくなってしまう可能性があります。

フロントガラス以外にも、以下のような車の修理、もしくはパーツを交換した際は、エーミングが必要になることがあります。

  • バンパーやグリル交換
    センサーやカメラが取り付けられているため
  • ドアミラー交換、着脱
    カメラが内蔵されている場合
  • ヘッドライト交換
    アダプティブヘッドライトなど自動調整機能を持っている場合
  • フレーム修正を行う板金塗装

また、以下の作業を行った際もエーミングが必要になります。

  • 自動ブレーキやレーンキープアシストに使われる前方をセンシングするためのカメラの取り外しや機能調整
  • 自動運転装置の取り外し
  • 自動運転装置の作動に影響を及ぼす可能性のある整備や改造

エーミングが必要ないパーツ交換

以下のパーツを交換した場合は、基本的にエーミングが必要ありません。

  • タイヤとホイール

通常はエーミングを必要としませんが、ホイールアライメントは別途エーミングが必要になる場合があります。

  • バッテリー
  • エンジンオイルやフィルター
  • ワイパー
  • エアフィルター など

各車両やシステムにより異なる場合があるので、依頼する店舗のスタッフに確認しましょう。

エーミングの作業内容

ここではエーミングに必要な工具や作業手順などについてご紹介します。

エーミングに必要な工具

エーミング作業には、多くの専門工具が必要です。

  • 水準器:作業場の水平度の確認
  • アライメント測定器:エーミング前にアライメント調整が必要
  • 水糸、下げ振り:車両の中心を出す
  • 整備書:ターゲットやリフレクターなどについて記載
  • ターゲット、リフレクター:カメラに読み込ませるための標的になるもの
  • デジタル角度計:センサーの角度を計測
  • レーダー距離計:ターゲットとの距離を計測
  • メジャー:ターゲットを置く位置を計測
  • スキャンツール:車につないで使用する外部診断機、エーミングはこれで行う

エーミングに必要な作業環境

エーミングの作業を行うには、車両ごとのサービスマニュアルに従って手順を守るだけでなく、作業環境も整えなければなりません。ここでは、代表的な環境要件を紹介します。

水平で無風の室内

エーミングターゲットを設置するときは、床が水平であることが絶対条件です。床に傾斜があると測定数値に誤差が生まれ、センサー位置の調整精度が落ちるためです。

また、屋外では風の影響でターゲットが動いたり、強い日光が入ることでカメラの補正が乱れたりする可能性があるため、室内かつ無風環境で行わなければなりません。

そのため、エーミング専用ブースを設ける必要があります。

指定された床の広さ

エーミングでは、ターゲットパネルを一定の距離まで離して設置する必要があるため、十分な作業スペースが必要です。

指定の距離を満たしていないとパネルの位置取りが適正に行えず、最終的に得られる数値の正確性が保証できません。

車両ごとの作業距離やターゲットの高さは詳細な規定があるため、それに合致した床面積が必要です。

作業スペースの広さは自動車の区分によって決められており、普通乗用車、軽自動車の場合は以下のとおりです。

  • 普通乗用車:6m×2.5m、うち屋内の広さが3m×2.5m
  • 軽自動車:5.5m×2m、うち屋内の広さが4m×2m

周囲に反射物や障害物がない

レーダーやカメラを使用するエーミングでは、周囲に金属やガラスなど反射率の高い物体があると誤作動の原因になります。また、赤外線や超音波センサーを使用する場合も、周囲の障害物に反応して、測定に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、エーミング対象車とターゲットパネルの間に不要な物を置かないのはもちろん、作業スペース全体を整理しておく必要があります。

十分な作業スペースを確保したうえで、まわりに反射物がないか、光の影響やセンサーへの干渉がないかなどを事前にチェックすることが求められます。

エーミングの手順と調整方法

整備書にはエーミング作業前の準備が記載されています。

細かい指示は車によって異なりますが、タイヤの空気圧を適正にする、アライメントの調整、センサー類の清掃、荷物をすべて降ろすなどの作業が一般的です。

準備ができたら車両中心を割り出し、必要なターゲットを設置します。

このとき、ターゲット以外をシステムが認識しないように無地の段ボールや板などで隠す処置が必要なケースもあります。

ターゲットの距離や高さを車種に合わせて設定したら、スキャンツールを車に接続し、調整を行います。

測定項目は車によって異なるので、そのメーカーや車に合わせて項目ごとに細かい調整が必要です。

その後、学習走行が必要な車種は学習走行を行い、一連の作業は完了となります。

エーミングの作業手順に関しては以下記事で詳細を解説しているので、参考にしてください。

エーミングの作業時間

エーミングに必要な時間は車種によって異なります。

一般的には30分程度、学習走行が必要な車種は1~2時間程度を見ておくといいでしょう。

エーミングはどこで依頼できる?

ドライバー自身がDIY修理を行った後エーミング作業を依頼できる業者を探している、または、車の修理(板金修理)を行っている業者がエーミング作業のみを依頼したいと考えているケースが考えられます。

エーミング作業は資格が必要なため依頼できる店舗は限られる

エーミング作業は、自動車整備士であれば誰でも行えるわけではありません。

国が行う電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習に参加し、試験に合格し資格を付与された者のみ実施可能です。

そのため、車の修理(板金修理)はできても、エーミング作業ができないことにより修理そのものを受け付けられない状態になってしまうことも少なくありません。

エーミングの依頼先を選ぶ際のポイント

エーミングは車の安全性にかかわる重要な作業のため、信頼できる業者に依頼したいところです。

そのため、エーミング作業の依頼先を探す場合は、積極的にエーミング技術向上に取り組んでいる業者を選ぶことがおすすめです。

ホームページなどを確認し、どのような作業が行われているか、実績はどれくらいかチェックしてみましょう。

ENEOSウイングはエーミング作業も対応!

ENEOSウイングでは、エーミング作業にも対応しています。

また、エーミングを取り扱っていない業者様からの依頼も承っております。

ENEOSウイングのエーミングの特徴

車の先進安全技術は年々進化し、システムも複雑化しています。

ENEOSウイングでは、エーミングの重要性をいち早く認識し、全社でエーミングの知識、技術向上に取り組んでいます。

2023年10月には、初となるエーミング技術研修会、技術力コンテストを日本最大のエーミング組織であるJATTO(一般社団法人 日本技術技能研修機構)の協賛で開催しました。

使用した機器はボッシュ社製「DAS3000」。業界初のデジタル画像認識技術を採用した機種です。

模範演技や説明、実演を行いエーミングについての理解を深め、正しく作業ができているかを改めて確認、そして更なる技術力向上を図りました。

技術力コンテストを行うことで切磋琢磨しより技術、知識を高め、これまで以上の高いレベルでのサービスを実施できるように日々研鑽しています。

専門設備、そして高い技術レベルと知識を持った人材をそろえ、技術向上に取り組んでいるENEOSウイングにエーミングはお任せください。

エーミングに関するよくある質問

最後に、エーミングに関するよくある質問を回答と一緒にまとめました。

いつからエーミングが必須になりますか?

ASV車両に乗っているのであれば、今でもエーミングは必要といえます。

ただ、車検との関係でいえば、2024年10月1日のOBD車検の本格運用後は、車検に通るにはエーミング必須になります。

エーミングの相場はいくらですか?

費用相場は業者によって異なることはもちろん、車種や作業内容等によっても大きく異なります。

一概にいくらとは言えないため、依頼予定の店舗へ事前に確認すると良いでしょう。

フロントガラスを交換したらエーミングは必要ですか?

衝突被害軽減ブレーキなどを搭載したASV車両の場合は、エーミングが必要です。

エーミングの作業を行うには資格は必要ですか?

エーミング作業をするには、国が定めた「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」に参加し、試験に合格する必要があります。

エーミングの作業を行うには資格は必要ですか?

エーミング作業をするには、国が定めた「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」に参加し、試験に合格する必要があります。

他にもエーミングに関するよくある質問集を以下記事でまとめていますので、参考にしてください。

まとめ

衝突被害軽減ブレーキは新型車への搭載が義務付けられていることに加え、2025年12月以降は既存の車種も義務化の対象になります。

また、今後さらにハイレベルな運転支援機能や駐車支援機能を搭載しているモデルが増えてくることは明らかです。

ENEOSウイングではいち早くエーミングの重要性を認識し、知識の習得、技術力向上に取り組んでいます。

エーミングが必要となるほどの車の修理はもちろん、同業者様からのエーミング作業依頼も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

ENEOSウイング編集部です。コラムで車に関するお役立ち情報をお届けしています。

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